2010年4月19日月曜日

2010年4月19日号

今週の話題。
といって、先週最も大きいイベントだったNAB2010は今年は行けなかったので、さも見てきたかのようにしたり顔で…という訳にもいかない。他の情報サイトで記事は出てるのでここではあえて触れない。機会があればとりあげることにしよう。

さて、Twitterでも先々月来予告していたIntensity Proによる24pキャプチャの検証を目論んだのだが、カメラの仕様の前に見事に敗れ去った。というのも、7DのHDMI出力は基本撮った素材がなんであれ、1080/59.94iで出力するようになっているようで。Intensityの入力設定をいじっても1080/59.94i以外では入力が検出されない。つまり現状、プルダウンではなくネイティブ1080/24pでのProResキャプチャは7Dでは不可能。これは7D側の仕様の問題なので、他メーカーのキャプチャボードに換えても同じ結果だろう。恐らく「家庭用ハイビジョンTVで視聴すること」を前提とした機能だろうから、こういう使い方自体イレギュラーなのかもしれん。キヤノンもいずれファームウェアでフォローするかもしれないが、今回はコレについては放置することにした。



で、EOS MOVIE Plugin-E1 for Final Cut Proの検証である。詳しいことは専門誌や他サイトで書かれているとおり…で終わらせてはいけないので、個人環境での実測値を示しておきたい。

現在筆者の所有するFinal Cut Studioシステムは、
Mac Pro初期モデルの2×3.0GHz Dual-Core Intel Xeon
メモリは5GB、OSは10.6.3、FCPはVer7.0.2
内蔵SATA HDD2台でRAID0を組み、転送速度は180MB/sec程度
カードリーダーは秋葉館のUDMA対応 FW800 CFリーダーという環境

上記の環境で本日撮ってきた素材、24分44秒/28ファイルをEOS MOVIE Plugin-E1でProRes422HQ変換した場合のエンコード時間は、50分46秒

エンコード中のアクティビティモニタ プラグインなのでFCPが単独で200%前後消費している。FCPはCPUコア数が増えても全体使用率は同じ(つまり800%上限なら400%に増える)なので、最新機種であればもっと速いはず。

大体実時間比で2倍程度である。ProResは可変ビットレートなので、素材によって多少時間は増減すると思われる。
因みに、普通にiPhotoなどでHDDにコピーし、CompressorでProRes422HQ変換した場合のエンコード時間は、2時間35分31秒!
こんな時間かかってたっけなぁ…


エンコード中のアクティビティモニタ Compressorにデータを投げてる分、FCPの消費が低くなっている。プラグインを使った場合と比較して平均30~40%低い。



そう、いつもは時間がかかるのが前提なので、ちゃんと使いどころ決めてin outを切ってとやってるが、EOS MOVIE Plugin-E1はその必要性すらなくしてしまうほど速い…。むろん切り出して読み込みもできるし、内部時計によるフリーランのみとはいえタイムコードもついてきて、メタデータも追加できる。

これはFinal Cut ProユーザーでEOS MOVIEを扱う者は必携といえるプラグインだ。裏技的な使い方から実用的に漸進していくという意味で言えば、5Dmark2がマニュアル露出可能になったのと同じくらい素晴らしいアップデート。EOS MOVIEの進化は止まらないな…。

7Dの高感度ノイズ比較した作例はまた後で。

2010年4月16日金曜日

2010年4月16日号




カールツァイス、デジタル一眼レフカメラ用のマウント交換式シネレンズデジカメWatch

ZEISSのシネレンズ、Compact PrimeとLight Weight Zoomがinterchangeable mountとなり、キヤノンEFマウントに対応となった。米国で本日まで開催中のNAB2010で単焦点のCompact Prime CP.2と、ズームのLWZ.2 Vario-Sonnar 15.5-45 T2.6 T* XPが発表。
最初の噂を目にしてから今年のNABには注目していたが、まさかズームまで出てくるとは…、ZEISSの本気度を思い知った。
Compact Primeは既にOnlineオーダーを受け付けており、各焦点距離均一で2,900ユーロ、3〜7本セットが8,200〜19,900ユーロで、今までのシネレンズからすれば正に破格と言える価格設定だが、ズームもHDSLR向けの価格帯…になるんだろうか?そもそも国内の代理店はどこになるのか…やはりnacあたりになるのだろうか。7Dユーザーとしては、スーパー35サイズ用の軽量ズームの方が気になる。この全長と重量ならEFレンズの超望遠単焦点より軽いぐらいで、フットワークはいいんじゃないだろうか。ZEISS単焦点シネレンズにも惹かれるものはあるが…。
まぁ、本職のキャメラマンでもない人間が個人で買うようなレンズではないのだろうが、あのZEISSがデジタル一眼レフ用にシネレンズを出すなど、ちょっと前には考えられなかったことだ。EOS Movieがもたらしたものは大きい。これは欲しいな。

2010年4月15日木曜日

2010年4月15日号


昨日、丸の内ピカデリーで『第9地区』を観た。
いやはや、すごい映画が出てきたものだ。前評判通りで実に面白かった。
批評めいたことを書く気はない。単純に感想を述べる。ネタバレあり。

この映画は「頭を空っぽにして楽しもうとすると熱湯を浴びせてくる映画」だ。油断すると火傷する。しかしハマれば、サウナから上がってきて浴びるシャワーのように心地よくポカポカ湯上り感が残る。

南アフリカ共和国・ヨハネスブルグ。アパルトヘイトが終わる前にやってきた宇宙人難民。侵略に来たか、たまたま不時着してきたか理由は定かでないにせよ、人類にとって初の未知との遭遇。というようなロマン?は一切なく、招かれざる客は引きこもりで不潔で野蛮な「エビ」だという実際を目の当たりにし、幻想を砕かれた人類は彼らを忌避する。
宇宙人難民を被差別民として、地元住民との衝突、諍い、さらには犯罪との結託まで、人種差別・隔離政策の根源的問題をほとんどやりたい放題に描いている。つまり、見た目で判断しちゃいけないとか、差別はいけないとかそういう当たり前に声高に叫ばれる人権問題を、正に人外の存在である宇宙人に当てはめて、おまえら綺麗事言ってるけど、実際問題こんなことが起こったらどうなのよ?という揺さぶりをかけてくる。
人類と差別の歴史を見れば、この映画の登場人物を笑ってはいられない。被差別民だった移民黒人たちがより下層の存在である「エビ」を猫缶でつって食い物にしていくさまは痛烈なアイロニーが込められている。世界連合とか、白塗りの武器とか装甲車は国連を思わせ、多国籍企業MNUはつまるところPMCというか軍需企業で「人道的見地」とやらにはとんと興味がなく、人体実験に狂喜するような異常さが渦巻く。
第9地区から強制移住させるシーンは悪意たっぷりで、「中絶」のシーンなどホントに悪寒が走る。ヘイトクライムどころじゃない。これはホロコーストじゃないか。それを嬉々としてやっていた主人公ヴィカスがウイルスに感染し、さも当然のように行われる痛覚実験など、どこかで聞いたような話だ。電気ショックで兵器試験に供したりするところは、なぜか『時計じかけのオレンジ』を思い出した。
結局、本編中ほぼ唯一の「真人間」はクリストファーと呼ばれるインテリ宇宙人のみという、全く狂いまくってる現実。ヴィカスが目覚めたものは正義ではなく、追い詰められた生存欲で、恩人とも言えるクリストファーを簡単に裏切る。しかし、ワルくても本質的な部分で善人であるヴィカスは結局彼を助けて、絶望的な戦いに身を投じる。そして最後に彼を救う者は…。
こういう異人種間の協力というと、古典的名作『夜の大捜査線』を思い出す。この場合立場が逆だが。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。人間は他者と理解しあえるか、または人は本当の意味で他者であることに耐えられるか、というのがテーマだろう。低予算を逆手に、あくまで1事件、1つのエピソードとして描く方法も評価したい。この手のSF映画にはこういうやり方が合ってると思う。

ま、だらだら書き連ねてはみたものの、要は人間をドカドカ爽快に吹き飛ばし、薙ぎ倒していく正調暴力SFで、動機は少年漫画のようにわかりやすく、ポリティックなメッセージが爽快なバイオレンスギャグで味付けされてる、はっきり言って女性にはオススメできない男の子映画。これが長編デビューとなるニール・ブロムカンプ監督は30歳。いやはや、怪物な才能が世に出てきたものだ。



「必ず捕まえます」→爆発の流れと、傭兵を豚ごとぶっ飛ばすシーンは最高だ!