2014年1月15日水曜日

FDR-AX100は名機となるか



CES 2014でSONYから新たなハンディカムが発表された。
FDR-AX100

4K(正確にはFHD=1920×1080の4倍の解像度、UHD=3840×2160)で撮影できる“ハンディカム”だ。
SONYらしい新フォーマット民生機というか…狙いすましてこういうエポックな機材を作れるのはトップメーカーの強みだと思う。
一応、昨年出たFDR-AX1とその業務機版PXW-Z100という機種があるのだが、使ってる人いるのか?というほど広まっていない感じがする。最近の機材事情にはちょっと疎いが、大判CMOS搭載デジタル一眼レフムービーの熱狂的なブームが各社からデジタルシネマキャメラとして出揃ったことで一段落つき、一昨年あたりからBlackmagic Cinema Camera、さらに昨年はPocket Cinema CameraがRAW撮影&DaVinci Resolveでカラーグレーディング価格破壊の大波を起こし、目下業界席巻中……そして今年のトレンドは、遂に4K時代突入か……?というところで出てきた、このハンディカム。

なんと、市場予想価格は22万円前後だという。4Kとは言え、DSLRやBCCと同じ価格帯に立たなければ勝負にならないと見たか、このFDR-AX100はかなり気合の入ったつくりと感じる。
さっそく仕様を見ていくと……

1.0型/総画素数2,090万画素(有効1,420万画素) 裏面照射型 "Exmor R" CMOSセンサー
XAVCS 4K/3840×2160 (30p/24p) 60Mbps 収録対応(映像処理エンジン「BIONZ X」)
ZEISS Vario-Sonnar T* f=29.0-348.0mm(F値2.8~4.5) 光学12倍ズームレンズ
レンズは7枚羽根 虹彩絞りNDフィルタ2枚内蔵、マニュアルズーム・フォーカス選択リング搭載
・デジタル160倍、全画素超解像ズーム機能24倍(HD)/18倍(4K)に対応
・メモリースティック・SDHC/SDXCカード(Class10推奨)で収録(64GBで4K 約130分収録)
・バッテリーはインフォリチウムVタイプ (NP-FV70使用時、連続撮影時間・約2時間15分)
・0.39型/144万ドット 有機ELファインダー&3.5型/92.1万ドット エクストラファイン液晶
・光学式手ブレ補正機能(アクティブレンズ方式、アクティブモード搭載)
・HD記録時は120pのハイフレームレート撮影可能
・5.1chサラウンドサウンドマイクロホン(マイボイスキャンセリング搭載)
・マルチインターフェースシュー端子搭載
・本体質量790g(NP-FV70使用の場合で撮影時 約915g)
フードが標準付属なのも好感。フィルター径は62mm

FDR-AX100、こいつは久々に名機の予感がするぞ! イイじゃないか。
オープン価格(ソニーストア価格219,800円)で3月14日発売予定!


SONY公式サンプル


兄貴分のFDR-AX1と比較して、いくつかの点でスペック下克上が起こっているのは見逃せない。
まず、1.0型 "Exmor R" CMOSセンサーは、FDR-AX1の1/2.3型より大きい
センサーが大きいということはそれだけ一つの画素に対して当たる光量が多くなり暗所に強く高画質……になるはず。実はこのサイズ、BPCCのセンサー(12.48mm×7.02mm Super16サイズ)よりもちょっと大きい。既存のデジカメで一番近いのはNikon1系のCXフォーマット。同じくSONYのデジカメCyber-shot DSC-RX100IIの1.0型(13.2×8.8mm)"Exmor R"CMOSセンサーに準じた性能のものが奢られているのだろう。
また、FDR-AX1に比べ体積で約1/4、質量で約1/3に小型化したというが、これは……ものは言いようというか、そもそもFDR-AX1は幅189mmx高さ193mmx奥行362mm、本体質量だけで約2440gあり、ハンディカムというにはちょっと肥大化しすぎているので……その点、FDR-AX100のハンディカムらしいコンパクトにまとまった佇まいは、とても好感が持てる。また最近の民生ハンディカムと違って「小さすぎず軽すぎない」のも魅力だ。ビデオキャメラはあまり軽すぎてもマズいといつも思う。
このサイズ感はDSR-PD100、DSR-PDX10、HVR-A1J、HXR-NX70Jなどに連なる系譜

そして、FDR-AX1がSONY純正Gレンズに対して、FDR-AX100はZeissズームレンズ
mini DVの昔からハンディカムにはZeissのVario-Sonnar、というのが刷り込まれてるので、実際の性能差は別として妙に安心感があるのは事実。普及型4K(UHD)という「高解像度かつコンパクト」が厳しく要求されるビデオキャメラの「主眼」たる光学系をZeissに任せたのは、長年の信頼関係の証か。
手ブレ補正が空間光学手ブレ補正でなくアクティブレンズ方式になったのは、4K収録にセンサー大型化も相まって映像処理エンジンの演算が手ブレ補正まで追いつかないという事情もある気がする。
虹彩絞り、NDフィルター、選択式ズーム/フォーカスリングなどは民生コンパクト機だからこそ地味に嬉しいマニュアル操作系、素晴らしい。ズームマイクもようやく新型になった。
オプションの新型ガンズームマイク「ECM-GZ1M」

ただ、FDR-AX100でネックになるのは、やはり4K/30p 60Mbps XAVC Sというフォーマットの限界。XAVC Sの色空間はYUV 4:2:0 8bitと記憶しているので、カラーグレーディングに対する耐性はやはり弱いと言わざるをえない。この点は、FDR-AX1の業務機種PXW-Z100がXQDメモリーカードで実現したDCI 4K(4096×2160) 60p 4:2:2 10bit 600Mbpsという数値には全く及ばない
しかしPXW-Z100は希望小売価格672,000円と、FDR-AX100のざっと3倍以上の価格なので、これぐらいの性能差はむしろ当たり前。FDR-AX100は民生機として4K(UHD)を普及するために生まれた機種であり、メインターゲットは「ホームビデオ」だろうから、4Kネイティブでカラーグレーディングまで不自由なくできるPC環境、それこそ新型のMacProなどを使って本格的な4K映画撮影に用いるようなユーザー層を狙っているわけではない。Blackmagic Pocket Cinema CameraならProRes422HQ/220Mbps、しかもCinemaDNG RAWまで撮れてカラーグレーディング耐性は抜群だし、約10万円で遥かに安い。という向きもあるだろうが、そうではなく今までのフルHDを編集できる程度の環境で、少しばかり編集して完成データを残し時々家族で鑑賞する…
つまり、「ホームビデオ」のユーザーにまず次世代の高解像度「4K」を認知させガッチリ囲い込むのがFDR-AX100の主目的と言えるだろう

ちょっと心配なのは、FDR-AX1に対する業務機種PXW-Z100のように、FDR-AX100にも業務機版が出るのではないか、という点。しかしこれはメモリースティック・SDカードを記録メディアとして使う以上、4Kをさらに高いビットレートで書き込むのはいろいろ無理が出ると思う。たとえ書き込めたとしても、カード容量に対し録画時間があまりにも短いというのは、やはりハンディカムとして求められる条件に合致しないだろう。RAWで64GBで記録時間20分ですと言われても、仕事で何枚も使えるユーザーは構わないだろうが家庭用としてはちょっと……。したがってFDR-AX100に業務機版が出たとしても、FDR-AX1/PXW-Z100ほどの記録部分の性能差は出ないと思われる。もしそれを差をつけるならAX1/Z100同様、記録メディアにXQDを採用するしかないだろう。

そういえば、民生初のHDフォーマット「HDV」の初代機HDR-FX1が出たのはもう10年前になるか……専門学生の時無理してローンを組んで買ったのだが、EOS 7Dを使い始めてからは持ち出す回数が激減したため、昨夏ついに売却してしまった

FDR-AX100は、4K(UHD)フォーマット初代機としてHDR-FX1を超える「名機」となって欲しいと願ってやまない

2014年1月1日水曜日

新年


明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

平成二十六年 元旦