2013年12月31日火曜日

年末年始


年も終わりが近づいてきた。
今年観た映画及びアニメなどまとめてみようかと思う。

まずは、映画新作ベスト

1.『パシフィック・リム
もはや説明不要の今年のベスト1。夏の時点でコレで決まりだった。
正しくIMAX3Dのための映画、とてつもない重量感!鉄人と怪獣の肉弾激突!以上!(小並感)。
導入から「お決まりの」「言わずと知れた」説明をどんどんかっ飛ばして、必要な部分だけをがっちり魅せて、怒涛のスピードで「未体験」の映像ゾーンに観客を巻き込んだら、後はもう緩急自在にドリフトする特撮娯楽活劇大洪水。監督の脳随が目から飛び込んで来る。一番好きなのは怪獣解体シーンだったりするが。

2.『ジャンゴ 繋がれざる者
黒人奴隷のジャンゴは賞金稼ぎシュルツの仕事を手伝いながら、生き別れた妻を探す。ついに妻を買った農園主を見つけ出し、奴隷商人に化けて交渉するが、偽装がバレてシュルツが農園主と相討ち、ジャンゴは戦い抜いて農園を壊滅させ、妻を取り戻す。
王道のストーリー、ケレン味たっぷりド派手なアクション、165分あっても全く飽きないつくりが見事にシネスコの画面に映える。威風堂々としたOPにシビれる。主人公ジャンゴもいいが、相棒シュルツがとてもいいキャラクター。面白かった。

3.『リンカーン
リンカーンが合衆国憲法修正第13条を打ち立てるため、権謀術数どんな汚い手段も駆使して阻害要因を潰していく、というお話。家族に対するリンカーンのグダグダな父親っぷりと、議論の場で己の信ずる正義を弁舌一本で貫くブレない政治家っぷりとの対比が面白い。誰もが知っている歴史の一部分、その中にあった本当の「ドラマ」を掘り起こすしっかりした映画。
国是を明文化する憲法を改正するには、かくも大変な議論が必要なのだという意味で、日本であまりにも安直な憲法改正が叫ばれていたタイミングでこの映画が公開されたのは良かったのでは、と思ったり。

4.『あれから
非常に良かった。抑制された誠実な言葉、脆く繊細だがピンと芯の通った感情で綴られる物語。「あれ」にさらされた〈東京〉の人間の、ひとつの真心が込もった秀逸な作品。始まりを示す「から」で物語を静かに終えるところが◎。全編を通して、穏やかな優しい眼差しを感じる。エンディングもよい曲。桜がとても綺麗に撮ってあるのに好感。
電車のカットでデジタル一眼動画撮影(CMOS)で出るローリングシャッター効果が、意味付けされて使われていたことに感服した。これを明確な表現として使った映画は初めてではないか。音響も相まって、電車がひどく尖った暴力的な装置として登場人物の心を蝕んでいるように見える。
また、主人公たちが涙を流すシーン。浅い被写界深度の中でフォーカスがブレるが、それが妙味になって、人間が泣く時の涙だけでない顔の全てを観客に注視させるのも巧い。

5.『はじまりのみち
軍部の圧力で干されて映画監督を辞した木下惠介は浜松へ帰郷する。空襲を逃れるため病身の母をリヤカーに乗せ疎開先へ向かう中、彼は映画への情熱を思い出し、母の激励で映画界へ戻る決意をする。
決して贅沢な作りではない(別の意味で超豪華な抜粋はある)けど、笑って泣けて元気が出る作品。こういうド直球なのは大好きだ。実写初監督でも流石は原恵一。加瀬亮がまたすごくイイ。通り一遍な「記念」伝記物でなく、鋭くキレのある映画だった。木下惠介作品を観たくなる効果は抜群。

6.『百年の時計
香川県の“ことでん”開業100年記念のご当地映画で、ほのぼの素朴な味わいだが、物語を支える基本構造が練られていて惹きこまれる娯楽映画。感情線に乗った時間と空間の飛ばし方、回想の混交が心地よく、積み重ねが丁寧でクライマックスにグッと来る。

7.『ゼロ・グラビティ
大晦日、年越しで観に行く予定……。評判を聞く限り、これ以上の順位に入ることは確実なので。後でちょっと書き足す。

8.『オブリビオン
宇宙人との戦争で荒廃した地球。タワー監視員のジャックは「夢」に出てくる妻と思わぬ形で再会する。自分が宇宙人による人類支配のため造られたクローン人間の1体と知った彼は、宇宙人の母船破壊を決行する。
とてもわかりやすいSF。ミッドポイントで主人公の世界観が逆転する。楽園追放&神殺しなモチーフだが、火の鳥の一編のような印象。運びがばか丁寧で逆にツッコミ所が露見してる気も。もっと煙に巻いた方がいいような……救いようがなくすっきりせず後味の悪いSFが好きな私は、偏った見方なのだろうが。
構造自体は娯楽として巧いけど、見えることと見えないこと、見えないことで見えてしまうこと、SFとしてそれらを「隠然と」支配してほしいというか。うまく言えないが。
でもとても大好きな映画で、いかにもSFの堅苦しいネタを薄味にせずほぐして料理した蟹缶のような映画。壮大なプロジェクターバックに、トム・クルーズの顔が二つも出て画面映えするし。宇宙知性体のキャラが希薄なのと、BOSEのCFかっていう過剰な音楽は受け入れ難い…

9.『オーガストウォーズ
08年にグルジアとロシアの間で勃発した南オセチア戦争、別名8月戦争を題材にとった戦争映画。基本線は若い母親が、戦場にたった一人置き去りになった幼い息子を助けに行く、という単純な話。魅力はお母ちゃんが兵士たちにくっついて戦場を駆ける中で、めきめき強くなっていくところだ。ロシア軍の陸戦兵器を大挙出したいために申し訳程度のプロパガンダを乗せ、後はひたすらゴリゴリと現代市街地戦闘がこれでもかと描破されるガチな戦争映画なのだが、戦争状況下をリアル体験している人々の、なんか慣れてる実感がさりげなく描かれ、単調なアクションでないのが良い。

ほか、今年観た作品で特に印象に残ったのは……
『台風クラブ』『宇宙人ポール』『復讐捜査線』『THEM』『あやつり糸の世界』『日本の熱い日々 謀殺・下山事件』『ルナ・パパ』『レマゲン鉄橋』『レッド・アフガン』『清作の妻』『カメレオンマン』『スローターハウス5』『カリフォルニア・ドールズ』『合衆国最後の日』『櫻の園』『We Can't Go Home Again』『キラーカーズ パリを食べた車』『遠い空の向こうに』
(以上観た順)


次に、アニメ映画ベスト

1.『風立ちぬ
これを今年のベスト1にするかどうかはちょっと迷った。この映画をまだ捉えきれていない、自分の中で評価が固まっていない部分があるので。
初見時は否定的とまではいかないが、あまり評価していなかった。ポニョのような変な引き出しをぶちまけてしまった映画や、ハウルのような頭を抱えて唸ってしまう映画や、千と千尋のような見返すのを何かためらってしまう映画とも違う、スッキリしているが、この一体何を考えてつくってるのか分からないところが、何か気に食わなかったのだろうと思う。宮﨑駿監督の映画全てが、凝縮されているのは分かる。
物語の中で、全てのきっかけは風によって訪れ、全編通して常に違う種類の風が吹いている。そして一瞬、主人公の中に吹いていた風が止みかけて、ふっと一つの命が消え、また全く違う方向へ風が吹いていく。最後ははじまりに見た、地獄であり天国でもある草原へ消えていく。

2.『パラノーマン ブライス・ホローの謎
幽霊と対話する能力を周囲から疎まれていた少年ノーマンは、大叔父から死者を甦らせる魔女の呪いを解く役目を負わされ、かつて魔女狩りで殺された少女の魂を救うことで、周囲の人々とも和解する。
評判通りの素晴らしい出来。人形の存在感がキャラを実体化する、命を吹き込む表現への畏敬と喜びに溢れ、そこに立ち上がる魅力的な世界観が喜怒哀楽と共振して物語の感動へ疾走する…もっと沢山の人に3D上映で観て欲しい作品。

3.『かぐや姫の物語
見るのにとても力がいる、そんな映画だった。私はキャッチコピーの「姫の犯した罪と罰」に惹かれて観に行ったので、最初は裏切られた気分だった。あまりにも竹取物語に忠実であったためだ。もっとアレンジを加え捻ったものが見たかった。確かにアニメーションに関しては現在でも最高の出来でコレを超えるのはしばらく不可能だろうし、実際歴史に残る作品だと思う。だが、端的に竹取物語を異常に丁寧な絵巻として見せているだけではないかという感想が残る。それは上手く誘導されてそう思っているだけなのか判然とせず、とても優れた文化映画を見せられたような気分。というか、ここまでやっても感情移入できるか怪しいヒロインなのか、かぐや姫。
姫=日本人と置き換えると日本人論的にはしっくり来るが、それだけではこの「何か」、高畑勲監督の映画に通ずるラストにこみ上げてくる「何か」を説明できない。複雑な気持ちで、この位である。

4.『サカサマのパテマ
面白い。宮﨑駿作品の、特にナウシカとラピュタの影響は如実に感じるが、それだけで留まらないSFとして考えられたモチーフに上手くボーイミーツガールと冒険が乗っかって、素敵な映画になっている。が、何かドライブ感が足りない、天地逆さま構造「だけ」の映画になってしまっているような……ガジェットや世界観は魅力的だが、どうもキービジュアルだけで出落ち感があるというか、冒頭からずっといつ構造をバラすのか期待していると、え、そこでバラすの?という感じで……引っ張りがない。どうせならもっと見せて欲しい。あのいかにもざっくりしたディストピアもどうかと思うし。

5.『映画ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!?未来につなぐ希望のドレス!
今年もまどマギ劇場版と同日に観た。戦闘少女ものとして10年に渡る蓄積であれほど完成されたフォーマットに則りながら、70分の中で濃厚な娯楽作品をつくってて感服した。場所が行ったり来たりするのにメイン客層の女児を全く置いてけぼりにしないつくりが◎。そしてシリーズ初、主人公がハッキリ流血するという「痛み」も、ちゃんと効いてて素晴らしかった。

6.『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語
今年のまどマギ劇場版は新作ということで期待して観に行っただけに、ちょっと評価を下げた。魔女関係のアートアニメがあまりにやり過ぎで食傷気味になる。
さやかの記憶が生み出している一見情緒的な論理とか、ちびっ子魔女の取ってつけた(実際はこれらのがキュウべえよりSF的な理屈が込められているのに)生かされてない感が、ほむらのこの上なく人間臭くて素敵な愛情=エゴのオーバーロードを食い気味になるのが、とても周りくどいなと。お陰でさやかの評価は上がったけど。
今回の見どころはさやか×杏子の再会。と、まどかへの献身で歪みまくった愛情が、TV版での他ならぬまどかの救済によって余計煮詰まって、遂に悪魔堕ちしてでも自身の満足という愛の形を時空を捻じ曲げて貫いて、正しくごうごうと燃えさかる愛を示したほむらの面目躍如、ぐらいで。
あれだけなら90分でつくるべきだし、ほむらも最終的にもう一個宇宙造っちゃうぐらいなら、もう人間ごときの倫理観に拘泥しないで欲しいなぁ……まど神様もTV版であそこまで覚悟して円環の理になったんだから、一部だけとはいえ人間に戻るような弱さを見せないで欲しかった。

今年のテレビアニメ・ベスト10

1.『惡の華
2.『進撃の巨人
3.『宇宙戦艦ヤマト2199
4.『キルラキル KILL la KILL
5.『たまゆら ~もあぐれっしぶ~
6.『翠星のガルガンティア
7.『ちはやふる2
8.『のんのんびより
9.『たまこまーけっと
10.『恋愛ラボ

各期いくつか選んでるが、次点として『<物語>シリーズ セカンドシーズン』『琴浦さん』『波打際のむろみさん』などが面白かった。まだ録ったままで見てないものも多いので、折を見て視聴していこう。
今年の前半は意識して毎日何かしら観るようにしていたものの、後半から艦これにハマりだしてどんどん視聴する作品数が減ってしまったので、一旦仕切り直し。来年からもっと見よう。


皆様 よいお年をお迎え下さい。来年もよろしくお願い申し上げます。