2014年9月20日土曜日

EOS 7D Mark II

昨夕、品川のキヤノンプラザSで先行展示されていたEOS 7D Mark IIを見てきた。
初代7D発売から丸5年、カメラ関係で大きいイベントが開催される度に出るぞ出るぞと噂され続け、ついに満を持してPhotokina2014で発表された7D Mark II。
待ち焦がれた時間はムダではなかったとひと目で分かる、まさにキヤノンAPS-C機の集大成ともいえるスペックを備え、ボディ¥20万という価格を引っ提げて登場したIMAGE MONSTERの正当な後継機。これは初代7Dユーザーとして早速触ってみなければと、閉館30分前に駆け込んで10分足らずだが触ってきたので、その感想を列挙してみる。
(念の為おことわり……ここで触れた7D Mark IIはまだ発売前の試作段階なので、これからファームウェアや機能などは変更される可能性があります)

パッと見た時の形状は先代7Dとほとんど変わらず、重量に至っては全く同じだ。ここ数年のキヤノンデジタル一眼レフのデザインの潮流に先鞭をつけた7Dの超流体フォルムを継承した上で、ボタン配置を5D Mark IIIに寄せてバランスを取っている。
持ってみた第一印象では、随分と「柔らかくなった」感じだった。先代7Dはそのずんぐりむっくりな形から想像するよりも手に触れる色々な所が尖っていて、顕著なのは例えば握りこんだ時に親指が当たるサムレストの盛り上がり部分だが、ここは7D Mark IIではかなり緩やかになっている。このサムレストの盛りはその加減によって一長一短あって、5D系のようになだらかだとホールド時は良いが片手で保持する時に滑りやすい。先代7Dだと逆に盛り(彫り)が深すぎてちょっと長時間握りこむと痺れてくる感じだったので、7D Mark IIの5DIII系と7Dの間を取ったちょっとだけ深いサムレストは好感が持てる。貼り革全体のシボ加工も先代のトゲトゲしさを緩め、かつ握りやすさを損なわない表面仕上げになっていて安心した。重量は全く同じなのに、重量配分が先代よりもバランスがとれホールドしやすくなっているように感じるのは、内装配置の見直しでぎっしりとメカが詰まった密度感が分散したことに加え、この「手触りの良さ」も貢献しているのだろう。
 
左肩の電源スイッチレバーはほぼ変更なし。誤動作防止のロックボタン付モード切替ダイヤルは、今までは有償対応でハードウェア・アップデートが施されていた部分だ。下部は多少なで肩になり、先代から受け継いだ誇らしげなEOS 7Dの銘板と、下にMarkIIの文字が彫り込まれている。
また後ろのMENUとINFOボタンは5DIIIと同じ配置に移され、ビューア画面横のスイッチは縦4つのままアサインされる機能が変更された。プレビューモードのINFO表示は煩雑なページ切替からスクロールに変わり、膨大な情報もスッキリとまとまって表示されるようになった。

反対の右肩で特徴的なのは、マルチコントローラの周囲に埋め込まれた勾玉のようなトグルスイッチ。これはMark IIで更に増えたAFエリアを選択するスイッチとして新設されたものだ。先代7Dでは同じエリア選択の制御にシャッターボタン手前のM-Fnボタンを使っていたが、シャッターから指を離さずAFエリアをパパっと切り替えられるようになったのは嬉しいユーザーも多いのではないか。
クイック設定ボタンは左肩からこのトグルスイッチの左下に移動、さらにその右下の静電容量式タッチ操作に対応したメインダイヤルとSETボタンは、ここも先代と比べ遥かに操作感が「柔らかく」なっている。7Dのダイヤル類は本当にガチガチとした操作感で、しっかりしているのは良いがゴリゴリガリガリと回るクリック音が固めで、しつこく回してると段々指が痛くなるほどだったのだが、それもかなり柔らかく優しいタッチに変わった。
7Dが標準化したライブビュー切替レバー&START/STOPボタン(この意匠が気に入ってTwitterのアイコンにずっと使っている)も、レバーが大きくなり引き続き親指ですぐRECをトリガーできる位置にあるのは嬉しい限り。また右端の3つボタンのうち、ライブビュー時の拡大・縮小を兼ねていた右2つのボタンはAFエリア切替スイッチとなった(アサインは変更可能か?)が、この点については後述する。

新たに搭載となったGPS機能、その受信アンテナがストロボ部分に埋め込まれたスクエアの「こぶ」。標準搭載されたロガー機能で撮影地ルート情報を記録でき、電子コンパスも搭載されたので撮った方位方角までログデータを残しておけるようになった。
さらにタイムラプス撮影用のインターバルタイマーや、長秒露光用のバルブタイマーも内蔵された。これはとても嬉しい改良点。なんせ7Dを買った当初は一眼レフ初心者で、間欠撮影がわざわざ外部接続のタイマーリモコンを使わねばできないということに愕然としたので……。一応、これらはHDR機能との併用も可能のようだ。ここまで出来るならカメラ内でタイムラプス動画作成までやってほしいところだが、あまり多くは望むまい。
これら一見地味な機能拡張は、昨今のデジタル一眼レフやミラーレス一眼の多機能化を考えてみればさっさと搭載して当たり前かもしれないが、これをいかに使いやすく実装するかがカメラメーカーにとっての勝負どころだ。

で、その勝負の肝といえる10コマ連写機能を試してみたのだが、これがもう凄いとしか言い様がない。シャッター機構が改良されてミラーショックが体感できるほど減り、連続開閉音はパシャカシャシャシャシャという感じできわめて軽やか。
先代7Dはバシャガシャシャシャシャという感じ。分かるだろうか、最初に濁点が入る音で荒々しく開閉する。これもまぁ嫌いではないのだが、10コマ/秒という爆速にも関わらず小気味良い音を立てまだまだ余裕という感じでドライブするMark IIと比べてしまうと、先代はどうにもやかましく息切れするようだ。
しかもその間、Mark IIは縦横に振り回して動体を追っても、ファインダー内の合焦点は完璧に追随してくる。これはもう、人間の眼と手足の延長線上にある「新たな身体の一部」とすら錯覚しそうになる。「運動する被写体」を追い記録する機械として、まず操作する人間の運動と一体化するコンセプト。優れたカメラだ。

動画機能の最大解像度/フレーム数は1920×1080/60pでIPB記録(1280×720/60pではALL-I記録)。1080p,720p共に、29.97p,24p,23.98pではALL-I/IPB記録に対応している。これは5DIIIと同様だ。なぜ上位機への下克上を図ってでも4K動画を積まなかったのかと言われる向きもあるだろうが、写真を撮るのが第一のデジタル一眼レフとして、これから5年間を第一線で戦う機体に、いま漸く大手各社スタートラインに立った4K動画、早々に陳腐化してしまうであろうそんな最新機能を性急に積むよりも、あえて1080/60pで周辺の処理能力に余裕を持たせて実装することは保守的ではあるがベターな選択と思う。単純に4Kをコンパクトに載せる技術がなかったとか、製品間のヒエラルキーを優先したとかいうことではないだろう。これで先代7Dでずっと苦しめられた熱暴走問題が改善されていれば全く文句はない。
そして、このAFの完成度と言ったら! 殊にライブビューのデュアルピクセルCMOS AFは先代7Dユーザーから見ればもはや夢の世界だ。目を見張るような応答の良さ、狙った位置にピタリとピントが来る安心感。さらに素晴らしいのは、この合焦の遷移速度まで調節できる動画サーボAFの高い機能性だ。
この速度調節はレンズを選ぶようだが、実はこれのおかげで、先ほど書いたライブビュー時の5x,10x拡大・縮小ボタンが右側から左側に移った「操作性の改悪」がほぼ帳消しになっている。7D Mark IIでは、動画サーボAFというかコンティニュイアスAFをONにしている状態だと、そもそも拡大・縮小ボタン自体がロックされ機能しないのだ。咄嗟に「マニュアルで拡大・縮小しつつピント合わせしたい」という時は、レンズの方でAF/MFスイッチをカチっと切り替えればOK。同時に拡大・縮小ボタンも機能するようになる。
何の事はない、動画撮影(ライブビュー)時のコントラストAFがそこそこ信頼の置ける速度・精度を得て、マニュアルでの拡大・縮小が必要な局面自体を減らし、かつ切替操作をワンアクションで済ませられるようしたのだ。これはうまく考えたなぁと感嘆。
(本当にササっと触った限りで掴んだ操作性なので、もしかしたら誤解があるかもだが……)

展示されていた7D Mark II 2台のうち、試したのはEF24-70mm F4L IS USMキット。これはズーミングもスムーズで、簡易マクロ、フォーカス諸々含め、7D Mark IIに合わせるには良いLレンズだと思う。ただMENUを探って見たところ、どうも動画サーボAFの合焦速度調節には対応していないっぽい。これはUSMレンズだからか……デュアルピクセルCMOS AF自体はちゃんと機能していたのだが。もしかしたら速度調節はSTMレンズしか対応してないのかも。

またついでに、同時発表されたEF24-105mm F3.5-5.6 IS STMEF-S24mm F2.8 STMも見てきた。
EF24-105mm F3.5-5.6 IS STMは、やはり同じ焦点距離のF4Lレンズと較べてしまうが、大分つくりが上品になったというかしっかりした感じがある。全体的に細身で軽く、ズームがしっとりとしてスムーズ、ロックボタンも付いてるが自重落下もしなさそうだ。軽量フルサイズの6Dとの組み合わせはベストマッチで、7Dではしっかり脇を締めないと難しい縦構図もすごく構えやすい。F4通しとLレンズにこだわらないユーザーには半額みたいなものだし、売れるだろうなこのレンズ。
EF-S24mm F2.8 IS STMは、APS-C専用のEF-Sライン初の単焦点パンケーキレンズ。ボディキャップのように薄く存在を感じさせないつくりで、割と使いやすい換算38mmという焦点距離、手頃な価格も相まってよく売れそうだ。が、展示されていたKiss X7iとの組み合わせでは、ライブビュー時に合焦で迷うのかえらくうるさいモーター音がする。静かなのがステッピングモーターの売りなのに……。これはレンズのつくりがコンパクトで薄いために目立つだけなのか、Kiss X7iボディのコントラストAFの性能問題なのかはっきりしなかったが、奥の方でEF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STMの付いた70Dを確認したところ非常に静かだったので、レンズのSTMというよりデュアルピクセルCMOS AFを搭載しているかどうかの差なのだろう。

さて、まとめると自分はもうEOS 7D Mark IIを買うしかないってことに……いろいろ検討したが、レンズもバッテリーもカードも周辺機器もバッグもシステムはひと通り揃ってて、中枢の7DをMark IIに入れ替えるだけですぐ稼働できる。操作性は5年かけて慣熟したものだし、今一番「動ける」カメラなのだよなぁ……できればEF24-70mm F4L ISとのキットが良いが、EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STMのキットもなかなか……こうやって悩んでる時間は楽しくって仕方がない。
(結局、ショールームで全7種のカタログもらってきてしまった。買う買う言ってるだけの金欠もいい加減にしないと……)

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